こんにちは、院長の宮脇大です。
今日はちょっと個人的な話をさせてください。
「なぜCPAP外来をオンラインで提供しているのか」という話です。
診療を受けてくださる患者さんから、「先生はなんでオンラインにしたんですか?」と聞かれることがあります。
「最近流行ってるから?」「コロナで変えた?」
いや、そういう話でもなくて・・。もう少し積み重ねてきた理由があるんですね。
今日は、その「なぜ」をお話ししてみようと思います。
SAS治療の「途中離脱問題」を長年ずっと気にしていた
私がSAS(睡眠時無呼吸症候群)の診療に本格的に関わるようになって、ずっと気になっていたことがあります。
それは、CPAPを処方されても、続かない患者さんが多いという現実です。
数字で言うと、CPAPを始めた患者さんの中で、1年後もきちんと使い続けている割合は、研究によってばらつきはありますが、半分を切ることも珍しくないと言われています。
これ、すごくもったいない話なんです・・。
SASは「治る病気」ではなくて、CPAPで「コントロールする病気」です。使い続ける限り効果が出て、使うのをやめると元に戻る。毎晩続けることに意味がある治療なんです。
だから離脱してしまうと、また夜間の無呼吸が繰り返されて、心臓や血管への負担も戻ってしまう。
なぜ離脱してしまうのか、患者さんに話を聞いていくと、「通院が面倒」「月1回のために仕事を休むのが大変」「病院に行く時間が取れない」という声がとにかく多かった。
月1回の受診が「ハードル」になっていた
CPAP治療中は、保険診療の観点から月1回〜3か月に1回の受診が必要です。
これ自体はおかしくない。経過観察は大切ですし、圧力の調整や機器のトラブル対応も必要になることがある。
でも実際に患者さんの立場で考えてみると・・。
朝9時の診察のために、仕事を半日休む。電車で30分かけて来院して、待合室で30分待って、先生と話す時間は5分。「問題なさそうですね」「また来月」で終わる。
これが毎月続くとしたら、どうでしょう??
「CPAPのデータは良好で、特に問題なし」という月が続いても、毎回物理的に病院に来なければいけない。患者さんが「もういいや・・」と思う気持ち、正直なところ、理解できるんです。
テクノロジーが「状況を変えた」
話が変わります。
2010年代後半から、CPAPの機器が大きく進化しました。
現在主流のCPAPは、使用データが毎晩クラウドに自動送信されるんです。
使用時間、治療下AHI(1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数)、マスクの空気漏れ、設定された圧力・・これらが全部、翌朝には医師の画面に届いています。
「昨晩、どうだったか」が毎日把握できる。
これが何を意味するかというと、問題が起きたらすぐ気づけるということです。
対面で「最近どうですか?」と聞かなくても、データを見れば今月の状態が分かる。データが良好であれば、「今月も問題なし」をオンラインで確認できる。
逆に、「先週からAHIが上がっているな」「空気漏れが増えているな」というときは、すぐに連絡して対応できる。
対面よりも、むしろきめ細かいフォローができる可能性がある、と気づいたんです。
「対面じゃないと診療できない」という思い込みを疑った
もう一つ、私自身が自分の「思い込み」を疑う出来事がありました。
あるとき、地方にお住まいの患者さんから問い合わせがありました。「近くにSASをきちんと診てくれる病院がない」と。
SASを専門的に診療できる施設は、残念ながら都市部に偏っています。地方の方が「ちゃんとCPAP管理を受けたい」と思っても、選択肢がない状況があるんです・・。
そのとき、「私が対面にこだわる理由は何だろう?」と本気で考えました。
データがクラウドで確認できる。問診はビデオ通話でできる。緊急のトラブルはLINEやメッセージで相談できる。
「安全性を確保しながら、オンラインで診られる部分はオンラインにしたほうが、患者さんのためになるんじゃないか」
そう結論を出したのが、当院のオンラインCPAP外来の出発点です。
「全部オンラインにした」わけではない
一つ、誤解しないでほしいことがあります。
「全部オンラインにした」わけではないんです。
SAS(睡眠時無呼吸症候群)の診療がオンラインで完結する時代にでも書きましたが、検査・診断はオンラインで全国対応できます。アプノモニター(簡易検査キット)を自宅に送って、1晩使って返送するだけ。
ただ、CPAPが必要になった場合の最初の2回の診察は、対面です。
最初の診察でCPAPの処方を決定して、機器のセットアップはメーカー(帝人さん等)が担当してくれます。その後、1〜2週間後のフォローアップも対面で確認する。
ここはきちんとやる。対面でしか確認できないことがあるし、患者さんとの信頼関係を作る上でも大切なステップだと思っています。
そして3回目以降、状態が安定していれば、オンライン診療に切り替えられる。
「オンラインに完全移行した」ではなくて、「必要なところは対面で、そうでないところはオンラインで」という設計にしています。
実際、SASの方は、SAS以外に循環器疾患を持っている方もおられます。その場合は、定期的な血液検査や対面診察が必要になるケースもあります。
つまるところ、ケースバイケースなのですが、その方の状況に合わせた診療を行っていきたいと思います。
Doctor’s Fitness 診療所では
当院のCPAP外来の設計は、「途中離脱をなくす」ということを一番に考えて作りました。
月1回の受診を「できるだけ負担なく続けられること」が、長期的な治療効果につながる。
検査から診断まではオンライン完結。CPAPが必要なら最初の2回は対面。そこからは毎月オンラインで経過確認。クラウドデータを毎日確認しているので、問題があればすぐに連絡します。
「CPAPを始めてみたいけど、続けられるか不安」という方には、CPAPがしんどい・続かない方へ — マスクの選び方・慣れ方のコツを医師が解説もあわせて読んでみてください。
また、「CPAPってそもそもどんな治療?」という方はCPAPって何?保険適用の条件・費用・効果をやさしく解説からどうぞ。
気になることがあれば、LINEからご相談いただけます。「オンラインでも大丈夫ですか?」「地方に住んでいるんですが」といった質問も、もちろん歓迎です。
「患者さんが続けやすい仕組み」を作りたかった
最後に一言。
私が「なぜオンラインにしたのか」を一言でまとめるなら、「患者さんが続けやすい仕組みを作りたかったから」です。
どんなに効果的な治療でも、続けられなければ意味がない。
「通院が大変だから」でCPAPをやめてしまうのは、本当にもったいない。
テクノロジーの力で、その「もったいない」を減らせるなら、使わない理由はないと思っています。
まだ試行錯誤はしていますが、オンライン診療が「患者さんにとっての選択肢の一つ」になってくれれば、それで十分です。
それでは、また!
次回は「私自身がCPAPを試してみた話」をお届けする予定です。医師として患者さんに処方してきたCPAPを、自分でも実際に使ってみた体験談です。ちょっと恥ずかしい話も含めてお伝えしようと思っています。
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